灰色の壁で無音の塾じゃ無いと集中できない!という母親
15年ほど前ですが、新中1の入塾説明会での出来事です。
数年に1回、まとめて5名ほど入塾を希望する生徒を募って説明会をします。
その説明会に参加した母親の中に、1人だけ塾の環境に対して文句を言ってくる人が居ました。
「こんな環境で勉強なんて出来るんですか~?」



この母親のイメージする塾を語り始めました。
「ふつう塾と言えば、灰色の壁で集中できる教室ですよね?」
つまり、ふつうの家で、周りにパソコンや楽器や、玄関には野球のバット・グローブ、バドミントン、バレーボールがあって、遊ぶ誘惑だらけの環境では勉強なんて出来るはずが無い!
そう言って、小学校野球のチームメイトのママ友に対して同意を求めていました。
私はその母親に対して、
「こういう環境でも勉強できるような集中力が育ちますよ。」
そして、昭和の駄菓子屋の想い出を少し話しました。
昭和の駄菓子屋の想い出☆子ども達の安全地帯
私が小学校の頃、近所にアポロという駄菓子屋(文房具店)がありました。
そこのおばちゃんは子ども好きで、いつも地域の子ども達が集まり、小学生から中学生までみんなおしゃべりをする為に集まります。
放課後、その駄菓子屋に行けば、たくさんの子ども達が集まっていて、初めて会う子とも直ぐにお友達になって仲良く遊ぶようになりました。
引っ越してきたばかりの子なども、アポロデビューすると直ぐに鬼ごっこに加えます。
地域の子ども達がそれだけ集まる場なので、やはり時々トラブルが起こりますが、そこのおばちゃんが何でも解決して仲直りさせてくれました。
そうやってアポロで過ごしながら成長していき、小学校高学年になると、低学年の子達の良きお兄ちゃん、お姉ちゃんとして面倒を見てあげ、イジメなどがあるとしっかりと解決してあげます。
そこに集まる子ども達はみんな、アポロのおばちゃんの人間性に惹かれて集まり、その影響を受けて成長して行きました。
中学生になると、様々な悩みに直面します。
おばちゃんは、本当に人情味のある方で、みんな親にも相談できない悩みを何でも話し、おばちゃんはそれを聞きながら、一緒に涙を流してくれます。
私が中学時代と言えば、バブル期まっただ中で、親は自分たちの仕事や娯楽に夢中な時代でした。
子供の数も、第二次ベビーブーム前後のため、どこに行っても子供だらけであり、放って置いても、子ども達は子ども達の社会の中で勝手に育つ時代でした。
なので、子供の遊びまで親が管理する現代とは違い、親は子供が何をしているのかほぼ把握していない、あまり関心が無い家庭も多かった気がします。
そんな中、中学になり、反抗期で親と口を利かなくなる時期、学校生活や部活、友達同士のトラブル、思春期特有の悩みがあっても、みんなアポロのおばちゃんに相談しに行きました。
昭和の古き良き時代です。
その駄菓子屋は、私が中学を卒業した春に閉店してしまいましたが、今でもその地域の子ども達を育ててくれた寺小屋のような空間だったと思い返します。
昭和の駄菓子屋のような塾があったら良いな…
もしアポロのおばちゃんが学校の先生だった良かったのに…
おばちゃんが塾の先生だったら良かったのにな…
いつもみんなはそう話していました。そしてその思いは、今も同じです。
私が大手の進学塾の講師を辞め、将来、もし自分で塾を開くとしたら、
あの昭和の駄菓子屋のような、子ども達が安心して集まってきて、
どんな悩みも相談できて、成長したら後輩の面倒を見る、
そうやって人の繋がりの中で成長できる学び舎を作りたいな…
そんな思いがありました。
大手塾を辞めた後は、数年間、私立中学受験専門の家庭教師を続けていましたが、
「勉強って、こうやって生徒が一番リラックスできる部屋、環境でもふつうに教えられるんだよな…」
そう考えていました。
私自身、大学受験は塾や予備校には通わず、自宅で勉強しました。
その時に、部屋に小さな観葉植物を置いたり、クラシック音楽をBGMで流したり、窓の外から見える緑を大切にしたり等、一番居心地のよい環境に整え、1日10時間以上は勉強する大学受験の日々を乗り切ることが出来ました。
(私の部屋にエアコンが無かったので、少しでも環境を整える必要があった為です汗)
家庭教師では、保護者に許可を取ってモーツアルトのCDを流しながら勉強させました。
同時に3名の生徒を見ていましたが、1名だけ、勉強中は無音じゃ無いと集中できないですよ、と、
親が断った家庭があったのですが(もちろん他の要因もありますが)その子だけ中学受験に落ちてしまい、勉強中にリラックスできる環境を整えた2名は、私が来ていない日の勉強中もモーツアルトのCDを流しながら勉強していたそうです。
その2名とも、本土のそこそこ有名な私立中学に合格しています。
落ちた生徒ですが、そこまで勉強好きでは無かった為、公立中に進んだのは良かったと思っています。
根が素直で、体つきも体育系であり、また中学受験を経験した子は公立中では成績上位を取れて自己肯定感が高くなります。
中学だと親の影響よりも、自分の意志で勉強を始めますので、その子の潜在能力は中学から一気に伸びるだろうと感ていたので、きっと成功していると信じています。
理想とする学び舎を開いてみよう
その後、紹介で大里に来て4年目に独立しますが、その時に、ずっと思い描いていた理想の学び舎、
松下村塾のような、先輩後輩の交流があり、先生と生徒の距離が近く、互いに成長し合える空間、
それ以上に、かつての昭和時代の駄菓子屋のように、子ども達が毎日でも気軽に集まり、遊びに来たついでに勉強する。
勉強は遊びの延長で、気がついたらすごく学力も上がっている。
受け身的な授業では無く、生徒達が自主的に学ぶような仕組みを作り、楽しく過ごしながら成長できる。
そういう学び舎を運営した結果、大学受験も私が教えられるのは数学・英語・現代文だけでしたが、
学び方を教えてきた事もあり、1期メンバーは国立大学に合格しています。
その後も、端から見れば遊んでいるだけだと馬鹿にされながらも、結果は大里中で向陽高校合格者8名のうち、5名は当塾の生徒です。(全員が理数科)



そうやって実際に、ふつうの家庭的な環境で、子ども達にとっては秘密基地のような塾として運営してきましたが、その結果、多くが進学校、大学への進学していきました。
灰色の壁の塾を望んだ母親の反応とその後
その説明会に参加していた母親達は、クレームを言った1人を除き、皆、
良いね~、うちの子は小学校ずっと勉強嫌いだったから…
先生、楽しそう!私たちが入りたいサ~
と、笑顔で楽しそうに聞いてくれました。
その時には、まさか勉強嫌いで少年野球に没頭して学力の低い我が子が、
3年後に上位校に合格するとは思いもしなかったでしょう。
ただ、
勉強嫌いなうちの子には、ちょうど良さそう…
そう思っていたはずです。
実際にその学年の生徒達は、先輩達の実績を上回る結果を出してくれました。
写真はその学年のメンバー達です。



そして、最後まで当塾のスタイルが受け入れられずに、灰色の壁の塾を選んだ母親の息子ですが、
中1、中2までの席次は私の教え子達よりずっと上位をキープしていたようですが、
中3は伸び悩み、塾の模擬試験でA判定の高校を受けさせられたという事でした。
ちなみに当塾の場合、ほとんどがDやC判定で上位校にチャレンジして合格していきます。
そういうギリギリの生徒ばかり何年も見てきた為、最後の伸びや、それぞれの高校の本当のボーダーラインを知っているからこそ、生徒と相談しながら志望校を決めさせています。
塾選びのポイント☆子供にとっての快適空間であるか
最後にもう1つの例とまとめです。
大学時代に大手の進学塾講師バイトを経験し、
小中時代、勉強が苦手で大嫌いだった私は
勉強ってやり方と意識さえ変えれば本当は楽しいし、
伸びるんだけどな…
そう思いながら授業をしていました。
塾の方針を無視して、劣等生に対しても塾が楽しくなるように接し、
生徒全員の意識が変わるように、塾が楽しい、勉強楽しいかも…
そう思って貰うように楽しい授業を工夫しました。
そこで塾長に呼び出されて言われたのが、
「○○と、△△は塾としては辞めて欲しいからあまり声かけしないで下さい。」
つまり、塾が面白くないと感じるように仕向けて、自主的に退塾して貰おうという話でした。
その男子2人は、とてもやんちゃで面白いキャラですが、学力は最下位レベルで、授業の妨げになっています。
中1から在籍しているけど伸びる気配が無い…
大手塾としては仕方の無い判断だったと思えます。
しかし、私にとっては弟くらいしか離れていない可愛い中2の男子生徒です。
切っ掛けさえ与えれば十分に伸びる子達でした。
頑固な私は、要請には応えられませんとキッパリ断って、その後もその男子2人にはやる気が出るように接しましたが、会うのは週に2日の数学だけ、それ以外の授業ではやる気を無くすような声かけが続いていたわけです。
しかも中2の男子ですから、反抗期で傷つきやすい時期でした。
結局2人で一緒に辞めていきました。
その後すぐに空いた定員の枠に真面目な生徒が入ってきました…
今でも、その男子生徒2人の事を想い出す事があります。
それくらい思い入れの深い生徒達でした。
人間としては、とても良い子達だったのです。
その後どうなったのだろう…と気になっても、私はその半年後、塾長と対立して塾を辞め、その地域の生徒達との接点は無い為、知るよしもありません。
この話を先輩指導者にすると、
「その2人はきっと自分たちに合った塾を見つけて、そこで新しい指導者と出会って成長してるよ。
~拾う神ありって言うでしょ(^.^)」
と言われ、気が楽になりました。
良い塾・悪い塾というのは、その子にとって居心地の良い環境かどうかが一番なのだと言えます。
親の先入観で、塾とはこうあるべき!
白い壁で、無音で、余計なものが一切無い昔のオフィスビルのような環境が一番だ!
と決めつけるのでは無く、
勉強嫌いだった自分が、もしもう一度中学からやり直せるとして、
こういう環境だったら勉強が好きになったかも…
そんな想像力で選ぶと良いかと思います。
実際に、かつてのオフィスビルの典型、殺風景な灰色の事務所ってかなり減りました。
業績の良い会社のオフィスは、植物があって、壁や区切りも温かみのある色が選ばれています。
コーヒースタンドや、フリースペースがあって、そこにノートPCを持って行って自分の居心地の良い環境で仕事しているイメージもあります。
子ども達の塾選びとして、まずは本人が楽しく通えそうか?
その塾の本当の実績と、塾長・指導者の笑顔を見て、
子供を安心して預けられるかで選ぶのもひとつの方法ではないでしょうか。